RACE REPORT
ツアー・オブ・ジャパン2023
- 日付:
- 2023年05月21日
- 開催地:
- 堺、京都、いなべ、美濃、信州飯田、富士山、相模原、東京
- 距離:
- 21日:2.6km / 22日:103.6km / 23日:127km / 24日:137.3km / 25日:120.9km / 26日:11.4km / 27日:107.5km / 28日:112km
- 天候:
- 晴天
- 出走:
- フランシスコ マンセボ ペレス, ホセ ビセンテ トリビオ, エドガー ノハレス ニエト, ゲオルギオス バグラス, 小林 海, 安原 大貴
ゴール勝負の豪脚で魅せたゲオルギウス・バグラスが個人総合ポイント賞4位!
4年ぶりの長い8日間レースは、天に守られ安定した天候で終えることができました。久しぶりの長いレース、久しぶりの1クラスでそのレベルの高さや激しさ、難しさを痛感することになりましたが、チームは全員が無事で完走することができました。支えてくださった皆様に感謝申し上げます。
◆プロローグ:堺国際クリテリウム
“ゲオルギオス・バグラスが豪脚披露し迫力の勝利!”
本戦を前に選手たちのお披露目となる華やかなクリテリウム、地元チームのマトリックスとしてはやはりここは魅せておきたい大切なレース。今季まだその噂を脚を見ることがなく謎めいていた新加入のバグラスにスプリント勝負を委ねたチームは、その噂の豪脚を目の当たりにすることになった。
大集団でのゴールスプリントを豪脚でねじ伏せた圧巻のスプリントに、チームだけでなく周囲騒然、バグラスの名はここで一気に注目を浴びる。総合はパコ、マリノ、そして山岳はホセ、マリノ、スプリントはバグラスと役者が揃ったことを実感し長いステージへのスタートを切る。
◆第1ステージ:堺
個人タイムトライアル、秒差タイムしかつかないが本格的なロードレースのステージを前にメンバーの力量がチェックできる。ここで上位に上がるメンバー、特に外国人選手は今後の総合に絡んでくることが多い。優勝はルーク・ランパーティ(トリニティ・レーシング)、彼の名は最終ステージまで聞くことになる。マトリックスはバグラスが13位で最高位、彼の秘めていた力量は徐々に明らかになってくる。チームは総合6位につけ、本格的なロードレースステージが始まる。
◆第2ステージ:京都
“ゲオルギウス・バグラスがまたも豪脚炸裂!ステージ優勝、総合リーダーに立つ!!”
京都ステージはマトリックスがホームチームを務め、コース上の各所に安原大貴をモデルとしてマトリックスが飾られている。京田辺市長がピットにお越しになられて激励いただき、チームは感激のスタート。
ステージ初日はポディウム&各賞ジャージを手にするチャンス、KOMやSPそれぞれのポイント早い者勝ちのためスタートからかなり活性。先ずはKOM争いから抜けた4名の先行を容認しKOMはこのグループで決まり、その後のゴール争いへの展開となるが、ラストラップで先頭を捕えに行くペースアップでなんとマリノが脱落してしまう。タイム遅れはこの後が厳しい、そんな不安を抱えるチームだったが集団ではバグラスがしっかりとゴールに備えていた。先頭捕え激しいアタック戦に応戦しながら大集団でのゴールスプリントを力強く制しステージ勝利!!
ホーム京都ステージでの大勝利に応援いただく地元に方々を歓喜させ、そしてチーム創立初のTOJ個人総合リーダーGet!!感無量。
◆第3ステージ:いなべ
“序盤からの逃げ切り展開、逃げ続けたカーター・ベトルスの逃げ切り勝利”
チーム初のリーダージャージを纏ったバグラスが先頭にたちパレードスタートからレースに入る。アップダウンが険しいこのステージはかなりキツいがなんとか平坦の美濃ステージまで繋いで信州飯田までは継続したい。
バグラスのリーダーを守るためチームは隊列組んで集団をコントロールしながらレース進行させる。序盤から2名が抜け出し先行、総合タイムの影響はあまり無いと捉えての容認だがツアー始まったばかりでどの選手も力量は判断できない。
先行2名のペースは衰えず、タイム差はどんどん広がり追いつくには容易ではないほど広がり始めたが、アップダウン厳しいコースをコントロールするマトリックスの消耗を待ち狙う他チームの意思の方が一致したらしく、コントロールには全く協力しないでレースは終盤まで進行。残り2周回で逃げ切りは間違いないものとなったが、逃げきられてもマトリックスが潰れる方がマシだったのか、レースの矛先をどこに向けてるのか全く分からないレースとなった。
結果、逃げ切りメンバーの第1ステージのTTで勝利したルーク・ランパーティがリーダーに立ち、バグラスは4秒差で総合3位に後退、それだけバグラスの総合力も脅威だと捉えてのことだったのが、何とも煮え切らない思いを抱くレースとなった。まだリーダー奪還できる、美濃ステージのスプリントに勝負を賭ける。
◆第4ステージ:美濃
“大迫力の集団ゴールスプリント、ゲオルギウス・バグラスが4位”
キツいアップダウンのステージが大半となるTOJでほっとする平坦基調のステージ。翌日から本気の山岳ステージとなるため、総合狙いのメンバーはレストするステージ。しかしマトリックスが擁する総合狙いはバグラス、リーダー奪還へ向けて続けて奮闘してもらうことになる。
天候に恵まれ美しい青空と清流を背景にツアー最長のステージは穏やかに進行、序盤からKOM争いのメンバーでできた5名の逃げが最終まで先行し続け、最後は予想どおりの集団ゴール。スプリンター達のガチンコ勝負でリーダー奪還もかけて行ったバグラスだったが、ラインとれず悔しい4位。獲ったのは前日逃げ切りを見せたリーダーのルーク・ランパーティ、これでタイム差を更に広げたことになる。初日TTの実力者はスプリント力も見せつけ頭角を現してきた。
バグラスは何度も何度も悔しがり、非常に悔しいステージとなった。総合タイム差は14秒、しかし翌日の信州飯田はスプリンター達にはとても厳しいコース。皆で励ましながら翌ステージへ進む。
◆第5ステージ:信州飯田
“序盤からの先行グループが逃げ切り、後続のトップで小林海がゴール。”
翌日の富士山ステージへ向けていよいよ上り得意な総合を意識した選手たちが出てくる。スタートからのアタック戦で出来た逃げにマリノが乗り9名で先行、しかし1回目のKOMへ向けた動きで吸収され変わってできた10名の逃げが終盤まで逃げ続けることになる。
マトリックスは入っていないが、ヴィクトワール広島、キナンレーシングチームが2名を入れ、油断できないメンバー。しかし、集団をコントロールするチームが無くタイム差は広がっていくばかり。その差は4分を越えてレースは終盤に入っていく。
残り3周、ようやく集団でトレンガヌと右京が引き始めペースアップ。先頭とのタイム差を縮めていくが遅かった。残り2周で4分、もう集団が追いつくことは難しい。そして先頭ではラストへ向けてのアタック戦が始まりいよいよゴールへ。制したのはJCL右京の岡篤志。そして追い上げながらの後続からはマリノが先頭をとり9位でゴール、このステージチーム最高位となった。
このステージの逃げ切りで総合争いは致命的なものとなってしまったが、復調してきたマリノが富士山では魅せてくれると期待する。
◆第6ステージ:富士山
“ガチな激ヒルクライム、小林 海が5位で日本人最高位!”
このステージでこれまでのリザルト全てがひっくり返ってしまう富士山テージ。ご存じあざみラインでの飾り無しの素ヒルクライム、前日のステージで致命的なタイム差をつけられてしまったチームだが、ここは個々が少しでもポジション上げたく着順を狙う。
スタートから各チームの上り強い選手が動き、先行する人数はみるみるうちに10名ほどに。更に抜けたのは昨年の覇者ネイサン・アール、ベンジャミン・ダイポールの2名。誰も止められない勢いの2名での勝負をネイサン・アールが勝利。ぽろぽろと続くゴールラインを5位で入ってきたのはマリノ、日本人最高位!リーダーのルーク・ランパーティも大きく遅れ総合上位は大きくメンバーが変わり、ほぼツアー総合の位置取りは決まってきた。チームは先ず先ずの着順範囲で全員がゴールしチーム総合も落とさず5位。総合をほぼ内定させる翌日のステージへ向かう。
◆第7ステージ:相模原
“予想外の大集団ゴール、ゲオルギウス・バグラスが5位”
ツアー総合をほぼ確定させるステージ相模原。アップダウンを含みながらも流れるコースレイアウトはスピード緩まず消耗を促す。時間総合は富士山で大差となっているが、ポイント、山岳はそれぞれ僅差、山岳総合はこのステージで確定となるため、この動きからレースは始まるであろうとの予想どおり、KOMへの動きからレースが始まった。
KOM僅差のBS兒島とヴィクトワールのキンテロが競うKOM争いはレオに軍配、総合山岳賞を決める。その後幾度もアタックかかるが決まらず集団は活性したままついにラストラップへ。予想外の集団ゴールにマトリックスも隊列整えバグラス体制、スプリントが始まるとバグラス前方へ、そして発射したが行く手阻まれ悔しく5位に沈む。
しかし翌日の最終ステージこそがスプリンターの出番、いざ東京!総力挙げて戦います。
◆第8ステージ:東京
“大声援を受け逃げ続けたマリノ、仕上げの激烈スプリントバトルでバグラスが5位!”
個人総合、山岳賞はほぼ決まりで迎える最終ステージ、マトリックスはゲオルギウス・バグラスの爆脚に賭け、華やかな最終ステージ勝利を狙う。3周目からマリノが抜け出し5名のパックで先行を始める。風が強く長いバックストレートの向かい風は非常にキツいが、グループをリードして積極的に牽引誘導をするマリノに会場から大声援!マリノはメンバーに声かけながらペース落とさず周回続け、最後まで逃げ続けることになる。
メインをコントロールするのは総合リーダーを擁するJCL右京、そして2位につけるヴィクトワール広島が続く。マリノら先行はタイム差を徐々に広げ2分ほど、お約束の展開ではあるがメインでは各チームがエーススプリンターを大事に守り隊列しながら美しい集団で周回を重ねていく。マトリックスは集団中央ほどで落ち着きマリノに行方を委ねている。
残り4周、集団はタイム差を詰め始め、1分をきるとトリニティとマトリックスが前方へ上がる。その後ろに各チーム隊列し更に美しく色揃った集団はどんどんマリノら先頭に迫っていく。マリノは更にペースを上げてまだ逃げるが2名が脱落、3名で行けるところまで逃げる構えでマリノが牽引する。沿道のマリノコールが更に大きくなる中、ペースの上がった集団がマリノらを捕えたのはラストラップのバックストレート。そして最終ゴールへの激しい位置取り戦で集団はうねりながら速度を増していく。
今年のゴールラインは最終コーナーからの直線手前に位置に変わり、コーナーが決め手。前方でトレイン組んでいたマトリックスの左右から出てくる様々なトレインにかき乱されるが、バグラスの最終牽引はパコ、コーナーからの立ち上がり横広がりの集団から各スプリンター達が一斉発射。
バグラス前方塞がれたかのようだったがねじ上がるも届かずか、先に駆け上がったBS窪木一茂が勝利、バグラス悔しい5位。
またしても非常に悔しがるバグラスだが、終わってみれば8ステージ中/4回スプリント勝負で5位以内に入っている。彼の実力を日本でようやく見せることができたがまだまだ発揮しきれてないのかも?しれない。今後の日本レースでの活躍が楽しみなメンバー。そして総合はホセが10位、パコ18位でUCIポイントを獲得。全てがあと一つ惜しいところだったが、続く熊野、各国選手権とピークを迎える6月のレースへ向けての手応えは感じています。
photo by Satoru Kato、Itaru Mitsui、YOSUKE SUGA、Shizu Furusaka