RACE REPORT

群馬CSCロードレース6月

日付:
2024年10月14日
開催地:
群馬県利根郡みなかみ町新巻3853 群馬サイクルスポーツセンター 6㎞サーキットコース(逆回り)
距離:
162m(6.0km×27回) スプリントポイント10%×4回(3、6、15、20周回完了時)
天候:
晴天 気温30℃
出走:
アイラン フェルナンデス, ホセ ビセンテ トリビオ, 吉田 隼人, 安原 大貴, 小森 亮平, 狩野 智也, 小林 海, 瀧山 里玖

Jプロツアー第7戦
レースレイティング:シルバー

“小林 海(マリノ)が逃げ切りの圧勝!!ホセのリーダー、チーム総合トップともにキープ”

ツアー・オブ・ジャパンを終え6月、国内ロードレースはいよいよトップシーズンを迎える。しかし世界中を脅かし続けているCOVID-19の勢いはなかなか衰えず、再び大会中止が次々と決定されるようになってきた。そして、シーズントップに置かれている6月末の全日本選手権についても遂に中止が決定された。

その前週となるJプロツアー第7戦は予定通りの開催が決定、沈みつつある状況下での一筋の光を求め再び群馬の地へ向かう。全日本選手権を見据えて設定された今季3度目の群馬CSCでのレースは、今季最長距離の162km、レース時間は4時間に及ぶ強度も難易度も高い設定。そしてツアー初の群馬CSC逆回りコースの設定で難易度を上げ、更に「セレクションレース」という特別制度のもと、ツアー登録外の強者たちが参戦しプレ全日本選手権としての見立て。レース設定やスタートリストに載るまでの背景や環境に周囲の捉え方は様々であるが、選手たちはシンプルにそれもレース要素として受け入れ、仮説を立て戦略を練りGameをする。どんな事情があろうともスタートラインからは競技者たちの聖地、レースを創るのは競技者たちである。二度と同じものは無い脚々が織りなす瞬間の芸術作品には細部隅々まで意味があり、活き活きとした一瞬の全てが奇跡である。

厳しい状況下で開催をさせていただけるこの群馬CSCが現在一番多いレースとなってくる。この群馬CSCでのレースの勝率を上げていくことが、ツアー総合を獲ることにも繋がるためチームは戦略を練る。この群馬で勝率の高いTEAM BRIDGESTONE Cyclingをはじめ強豪チームがメンバーを揃えてきているが、マトリックスはリーダーチームとして主導をとりレースを進めていく。

今回は珍しく朝一番のスタート時間、夏日予報ではあるがすっきりとした青空の下まだ涼しいうちにレースがスタートした。初の逆回りのため1周半がニュートラル走行となり、長丁場とは言え実際には25周で前回と大差ない。しかしこの逆回り、ラップタイムは正回りとあまり変わらないがアップダウンはきつくなり脚に負担がかかる。サーキット特有のスピードで消化するアップダウンが逆からの場合は踏んで消化していくことになる。距離もさながら消耗度も上がり実力差が出やすいレースとなる。

リアルスタートが切られると直ぐに1回目のスプリントポイントを迎える。すぐさま飛び出しに乗ったのは大貴、狙い通りに1回目のポイントを獲り先頭で通過していく。集団は活性し散発的な飛び出しが続く中、5周目に入るところで落車が発生し有力選手も数名が離脱、寸断された集団で大貴ら数名が脚止めを食らい、復帰するのに脚を使う。その間もアタックがかかり続ける前方はそのまま前へ抜け19名という大人数の先頭集団ができていた。


マトリックスはホセ、小森、マリノが入り6周目、2回目のポイントは石橋 学(CIEL BLEU KANOYA)が獲り先頭14名で通過、その後、大貴がジャンプに成功し、マトリックス4名を含んだ16名のグループで先行する。

ホセ・ビセンテ・トリビオ、安原大貴、小森亮平、小林 海(マトリックスパワータグ4名)
岡本 隼、渡邉 歩(愛三工業レーシングチーム2名)
徳田 優、沢田 時(TEAM BRIDGESTONE Cycling 2名)
冨尾大地、石橋 学(CIEL BLEU KANOYA 2名)
井上文成(弱虫ペダルサイクリングチーム)
西本健三郎(EQADS)
西村大輝、山本幸平、及川一総、西尾勇人(セレクションチーム 4名)

メインとはタイム差1分、メインは愛三工業レーシングが前方を固めコントロール開始、完全に鎮静しタイム差は更に開いていく。先頭をコントロールするのは人数を入れているマトリックス、この逃げの状況は終盤まで続くことになる。

日差しが強くなり汗ばむほどに気温が上昇してきた。10周を過ぎレース中盤、先頭からメインまでは3分近くまで開いてくる。この辺りからメインのコントロールはTEAM BRIDGESTONE Cyclingが中心となってくる。先頭グループの人数はまだ多く終盤の展開は変化すると思われるが、スプリンター主格をメインに残しているからであろう。白いトレイン固定で牽引を続けるがなかなか差は縮まらない。マトリックスはアイラン、隼人、狩野がしっかりとBSトレインの次に隊列している。

15周目、3回目のポイントは再び大貴が獲り他チームのボーナスポイントを阻止していく。先行グループでは4名入っているマトリックスが優勢、順調にコントロールを重ねていく。

その間もメインではオリンピック代表の橋本英也を中心にTEAM BRIDGESTONE Cyclingがその人数を減らしながらも集団引き上げに牽引を続けているが、他チームからの協力姿勢は特に見らない。残り10周回、タイム差はさほど縮まってはおらずまだ2分15秒ほど、8分30秒前後であったラップタイムは9分近くにまで落ちてくる。

18周目にはメインで牽き続けるBS勢で残るのは3名ほど、しかし油断できない主格たちをしっかりと残しながら牽引を貫いている。先行展開でも好しとするマトリックス、愛三工業レーシングがその後ろに隊列しライバルが消耗するのを静観する。遂にBSのコントロールは尽きてしまうが、変わって牽引するチームは出て来ずタイム差はまた広がっていく。

一方先行グループでは石橋のアタックで活性し山本、及川の2名が脱落、最後のポイント20周目へ向けて動きが激しくなってくる。

タイム差3分を超えてきたメインでは牽引尽きたTEAM BRIDGESTONE Cyclingの今村駿介がアタックし、単独で20周目へ。後続はマトリックスをはじめ先行グループへ預けられるチームが前方を固めてペースコントロールし、今村の動きには反応しない。続いて入部正太朗(弱虫ペダルサイクリングチーム)も単独で抜け追走を開始、先行グループでは最後のポイント周回への激しい争いからホセが獲りボーナスポイントを稼ぐ。

22周目、単独追走をかけていた今村、入部ともに踏み止めてメインへ戻る。いよいよ残り6周となりメインでも体制を整える動き、マトリックスはスプリンターの隼人と牽引役のアイラン、狩野を残し終盤への備えもできている。しかし先頭とのタイム差はまだ2分以上、先行逃げ切りの可能性が高くなってくる。


まだ人数の多い先頭では終盤へ向けての振るい落としを狙う動き、愛三工業レーシングの岡本などスプリンターを抱えるチームに対しゴール勝負を好しとしないチームとしてCIEL BLEU KANOYAから冨尾が単独飛び出し50秒先行。その後を小森が単独で追いながら24周目へ。

残り4周、メインでの協調牽引は見られないまま単発的な抜け出しの動きで人数が減り30名ほど。先行とのタイム差は変わらず2分台、いよいよ逃げ切り濃厚となってくる。そして快調に単独先行を続ける冨尾に対し後続も追い上げが始まり追走の小森を吸収、そこからマリノ、沢田、渡邉、井上の4名が抜けて冨尾を追う。

やがて冨尾は吸収されるが先頭は渡邉がドロップし、マリノ、沢田、井上の3名先行で25周目へ。激しい活性で崩壊した後続はホセ、大貴、小森、冨尾、石橋、西村、西尾、渡邉、西本の9名、やがて役目を終えた小森がドロップする。

残り3周、先頭ではマリノが積極的に前を行く。自身のペースに対してやや離れる2名に対し「いけると思った」と冷静に判断したマリノは、勝負へのモードへ切り替え踏み始める。

26周目へ向けてのバックストレートに現れた単独のマリノはノンストップ便のレールに乗ったかのようにスムーズな快走。20秒差で追うのはMTBトップライダーの沢田、それぞれ独走で26周目へ。その後続はホセ、大貴がしっかりと抑えている。メインはまだ2分以上も離れており、もう追いつくことはない。

まだ残り2周もある不安を感じさせないマリノの走り、本人曰く「得意のパターン」というこの大逃げは見事に決まった。もう止まらないマリノは後続に1分もの差をつけてラストラップへ。

その勝利走を皆へじっくりたっぷりと見せつけて悠々堂々のゴール!!彼自身5年ぶり、そしてまだ活動浅いJプロツアーでの初勝利、チームにとっての今季4勝目を挙げた。

マリノから1分ほどで単独追走していた沢田 時(TEAM BRIDGESTONE Cycling)が後続へも1分ほどの差をつけてゴール。やはり群馬に強いTEAM BRIDGESTONE Cyclingは最後まで脅かす存在、後続も逃げ切りの先行メンバー8名でのゴール勝負であったが、そこへメインから窪木一茂、今村駿介が入ってきている。その中でホセが7位、大貴8位でゴールし、今回はチーム力でもこのレースを制することができたと言えるだろう。

高い強度設定とした長丁場のレースは出走101名のうち完走41名、マトリックスは6名をしっかりと残してホセのリーダー、そしてチーム総合トップもしっかりキープ、チームにとっても嬉しい群馬での勝利となった。

今回、チームを支えるレジェンド「パコ・マンセボ」は翌週末に行われるスペイン選手権へ出場のため不在。しかし彼が見せ伝えてくれるレース精神はチームにしっかり息づき、勝利への支えとなっていた。同じ日にそれぞれの自国の地で同じ高いテンションで選手権を迎えるはずであったが、日本ではそれが叶わずとても残念。チームメイトの思いも乗せていつものように熱く走るであろうパコの選手権を応援しつつ、次戦へ向けて日々精進、日々躍進に励みます。

Photo by Satoru Kato, Itaru Mitsui, Shizu Furusaka

【結果】
1位 小林 海(マトリックスパワータグ)  4時間02分43秒
2位 沢田 時(TEAM BRIDGESTONE Cycling) +1’19
3位 井上文成(弱虫ペダルサイクリングチーム) +2’01
4位 冨尾大地(CIEL BLEU KANOYA)        +2’13
5位 岡本 隼(愛三工業レーシングチーム)   +2’23
6位 西村大輝(セレクションチーム)
7位 ホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)
8位 安原大貴(マトリックスパワータグ)      +2’24
29位 吉田隼人(マトリックスパワータグ)
32位 アイラン・フェルナンデス(マトリックスパワータグ)
40位 小森亮平(マトリックスパワータグ)
DNF 狩野智也(マトリックスパワータグ)
DNF 瀧山里玖(マトリックスパワータグ)

【個人総合】
1位 ホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ) 1675p
2位 フランシスコ・マンセボ(マトリックスパワータグ) 1196p
3位 岡本 隼(愛三工業レーシングチーム) 1165p

【チーム総合】
1位 マトリックスパワータグ 4190p
2位 TEAM BRIDGESTONE Cycling 3236p
3位 シマノレーシング 2451p