RACE REPORT

全日本選手権ロード・レース

日付:
2018年06月24日
開催地:
島根県益田市 北仙道地区振興センター発着 一般公道周回コース(14.2 km/周)
距離:
213.0 km (14.2 km×15周)
天候:
晴れ 気温30℃
出走:
佐野 淳哉, 土井 雪広, 安原 大貴, 田窪 賢次, 向川 尚樹

“佐野淳哉が2位!”

photo by team

いよいよ日本一を決める頂上決戦、全日本選手権ロードレース。選ばれた者たちが凛とした決意を持って聖なるスタートラインに立つ。

コースはこれまでに学生のレースなどでも開催されてきた島根県益田市での公道14.2km。アップダウンを繰り返しながらも大きく左回りをとる大周回、きつい勾配区間や道幅狭い下り区間なども含むが全体には流れに乗りやすく、スピードマン向きのコースとも言われている。スタートから上り区間、勾配のきつい部分は前半に多く含み高度を上げていき、後半は下り基調で少しずつ高度を下げていく。このアップダウンの繰り返しが長丁場レースでは堪えてくるとの予想。

マトリックスは栄光のタイトルを手にしてきたベテランの佐野、土井を中心としつつも、状況に応じ各々チャンスに備えよという捉え。ツアー戦などと違い、この捉え方や戦略は各チームそれぞれであろう。そして、チーム戦というシチュエーションでもないのが全日本選手権。不揃いであり一貫性もなく流動的、何が起こるか分からない“魔物が潜む”と言われている。この魔物とも戦い、だから難しい。
ここ最近は序盤の動きがそのまま決まることが多いため、監督は「始めの動きに注意」とミーティングで促す。

梅雨の最中、この決戦日だけはカラリと晴れた。朝から気温が上昇し9:00のスタート頃には既に汗ばむ気温。予想では30℃近くまで上がると言う、6時間もの長丁場レースは暑さも伴う過酷なレースとなりそうである。
スタートラインに漂う独特のピリピリ感、触れる空気に電流が流れているようなこの感触はチャンピオンシップならでは。
その空気を裂くように号砲が鳴り、選手たちが一斉にスタートした。

スタート直後の上り区間からアタックがかかる。このふるいにかけるパターンはいつものお約束、いきなり数名が抜け始め、最初にできたのは12名のグループ。マトリックスはそこに田窪が入る。

田窪賢次(マトリックスパワータグ)
徳田優、横塚浩平(チーム右京)
岡篤志(宇都宮ブリッツェン)
秋田拓磨、黒枝咲哉(シマノレーシング)
早川朋宏、阿曽圭佑(愛三工業レーシングチーム)
山本元喜(キナンサイクリングチーム)
堀孝明、石橋学(チームブリヂストンサイクリング)、
吉田悠人(那須ブラーゼン)

集団からは次々と前を追って抜ける選手が続く。「行った方がいいと思った」と言う佐野も加わり、17名がグループとなりながら合流、先頭は29名とかなりの人数。尚も後ろから加わろうとする動きが続きながらも1周回を21分ほどで完了。29名の先頭グループから30秒ほどで大貴を含む4名のグループ、やがてここまでがひとつになり35名の大集団。ここで全ての明暗が分かれることとなる。振り返ってみればこれが今回の魔物かもしれない。

田窪賢次、佐野淳哉、安原大貴(マトリックスパワータグ 3名)
徳田優、横塚浩平、平塚吉光、小石祐馬(チーム右京 4名)
岡篤志、小野寺玲、阿部嵩之、鈴木龍(宇都宮ブリッツェン 4名)
秋田拓磨、黒枝咲哉(シマノレーシング 2名)
早川朋宏、阿曽圭佑、岡本隼(愛三工業レーシングチーム 3名)
山本元喜、新城雄大(キナンサイクリングチーム 2名)
堀孝明、石橋学、大久保陣、原田裕成(チームブリヂストンサイクリング 4名)
吉田悠人、下島将輝、樋口峻明(那須ブラーゼン 3名)
中村龍太郎、大東泰弘(イナーメ信濃山形 2名)
中川智、杉山文崇(ヴィクトワール広島 2名)
吉田隼人(NIPPPO-VINIFANTINI-EUROPAOVINI)
高岡亮寛(Roppongi Express)
金子大介(7ELEVEN CLIQQ RBP)
豊田勝徳(WAKO’S RACING TEAM)
井上亮(Magellan System Japan)
清宮洋幸(竹芝サイクルレーシング)

残るメインは80名ほどでタイム差は1分40秒。3周目に入り、前後グループとも沈静していく。
メインには土井を含み、他強豪チームもエース格は全てメインに残る。まだ15周のうちの3周目で序盤。しばらくはこの状態が続くと思われるが、先頭の人数がかなり多く各チーム人数も入れている。この先頭グループがレース中に持つ役割がいまひとつ掴みどころない状況であることには違いない。そして、その差は徐々に開いていき、5周目には3分まで開く。

5周目にはメインから5名、6名と抜ける選手が出るが、チームで動くところは全くの無反応。先頭はペースを落としておりラップタイムは23分。メインは更にまったりとし、翌6周目では6分以上に離れ、7周目に入る頃には9分を過ぎていく。動こうとする様子のチームもなく、長丁場でもこのタイム差はもう諦めの姿勢としか言いようがない。

9周目、レースは折り返し。前後ともグループの様子に変わりなく淡々と周回を重ねている。しかし気温は昼の上昇ピークとなり30℃ほど、かなり暑い。周回を重ねるだけでもかなり消耗する様子、脚攣りなどで脱落する者が出始め、佐野も攣りを訴え疲労の色は隠せない。先頭も疲れが出たかペースが落ち、メインはシマノレーシングやチームブリヂストンサイクリングがコントロールを開始し徐々にペースを上げ始める。10周目に入る頃には先頭からのタイム差は6分強まで縮まる。

10周目、先頭からは樋口がアタックをかけて抜け出す。樋口は単独先行、この動きで先頭グループは活性し始め続くアタックの動き。追い上げるメインとは5分をきった11周目、今度は徳田と石橋がアタックし樋口をパスして先行。グループはより一層動きが激しくなり分断崩壊。ここから17名が抜ける。

佐野(マトリックスパワータグ)
小石、平塚、横塚(チーム右京)
石橋、大久保(チームブリヂストンサイクリング)
岡、小野寺、鈴木(宇都宮ブリッツェン)
早川、阿曽(愛三工業レーシングチーム)
山本、新城(キナンサイクリングチーム)
下島(那須ブラーゼン)、吉田(NIPPPO-VINIFANTINI-EUROPAOVINI)、高岡(Roppongi Express)
井上(Magellan System Japan)

チーム右京と宇都宮ブリッツェンは3名も残しており、マトリックスは佐野1名となってしまう。一方でペースアアップを始めたメインも崩壊し、脱落者が続出。人数は一気に半減し40名ほどとなる。

絞られた先頭17名は尚もアタックが続く。小石が積極的にアタックをかけており、12周目には山本と2名で抜ける。それを追う動きで17名も崩壊、追うのは佐野を含む4名で50秒。その1分後ろに7名、13周目へ残り3周。

先頭2名 小石、石橋
4名 00:50 佐野、石橋、小野寺、新城
7名 01:50 吉田、平塚、阿曽、早川、鈴木、下島、高岡、井上
39名 06:00 残る39名

佐野ら4名が懸命に追うが、先頭のキナン山本のチーム新城を含んでいるため上手く協調がとれない。その中、小野寺がドロップしてしまう、佐野は非常に厳しくなるが石橋と共同して尚も先頭を追う。
14周目に入った、佐野と石橋の表情がかなり険しい。先頭とは35秒、佐野は渾身引き上り区間をクリアしていく。
やがて石橋も力尽き、佐野と新城が先頭にジョイン。そこで更に佐野がアタックをかけると反応したのは山本、小石と新城は遅れるが、新城が粘り追いついてきたところでラストラップへ。キナン2名に対しマトリックス佐野1名で分が悪い。ここで今度は山本がアタックをした。

上り区間でアタックした山本に佐野は反応が遅れ直ぐに10秒も離れてしまう。懸命に追う佐野は新城を引き離してひたすら前を追う。しかし、それ以上に山本の走りは快調、前半の上り区間でその差は40秒にまで広がってしまう。残る下り区間で更に猛追するも追いつくことはできず、佐野に32秒の差をつけて山本元喜が単独でゴール。全日本チャンピオンのタイトルを手にした瞬間を待ち受けたチームと共に歓喜に涙する。

そして、多くの歓声と拍手を浴びながら佐野が帰ってきた。普段の穏やかさからは想像もできない、悔しさを全身で表し何度も叫ぶ。「悔しい、行けると思った、行きたかった」
2014年チャンピオンに輝いた時のレースも最終残った3名で勝負した相手は山本選手だったと語る佐野。時を経て、また同じような勝負に遭遇する不思議を話す。山本選手も同じような気持ちで受けているかもしれない。
年齢的にも大ベテランとなったいぶし銀のその走りに、2度目のタイトルを思わせたのは本人だけではなく、観る人々も胸熱に興奮させ、釘付けにさせたのは間違いない。

しかしレースは続く。切り替え次週はJプロツアー、ルビーレッドジャージを掴みにチーム一丸で戦います。

シーズンの山頂を越え、これより後半へ入ります。前半を無事終了できましたこと、支えていただいた皆様へ心より感謝申し上げます。
まだまだレースが続きますが、残る後半もどうぞよろしくお願いいたします。

【結果】
1位 山本元喜(キナンサイクリングチーム) 5時間46分53秒
2位 佐野淳哉(マトリックス・パワータグ) +32秒
3位 新城雄大(キナンサイクリングチーム) +2分43秒
4位 入部正太朗(シマノレーシング) +4分26秒
5位 平塚吉光(チーム右京) +4分32秒
6位 小石祐馬(チーム右京) +4分39秒
7位 中島康晴(キナンサイクリングチーム) +4分44秒
8位 井上亮(Megellan Cycling Team) +5分20秒
9位 阿曹圭佑(愛三工業レーシングチーム) +5分37秒
10位 小森亮平(愛三工業レーシングチーム)
11位 高岡亮寛(Roppongi Express) +5分39秒
12位 寺崎武郎(バルバレーシングクラブ) +5分55秒
13位 窪木一茂(チームブリヂストンサイクリング)
14位 吉田隼人(NIPPO・ヴィーニファンティーニ・エウロパオヴィーニ)
15位 早川朋宏(愛三工業レーシングチーム)
16位 石橋学(チームブリヂストンサイクリング) +7分49秒
17位 鈴木龍(宇都宮ブリッツェン) +7分52秒
18位小野寺玲(宇都宮ブリッツェン) +8分34秒
19位 下島将輝(那須ブラーゼン) +10分10秒
20位 近谷涼(チームブリヂストンサイクリング) +10分35秒

photo by Satoru Kato

Jプロツアー2020 チームランキング
(2020年10月11日時点)
1位 マトリックスパワータグ 8,316p
2位 宇都宮ブリッツェン 7,332p
3位 KINAN Cycling Team 6,311p
4位 愛三工業レーシングチーム 5,558p
5位 TeamUKYO 4,290p
Jプロツアー2020 個人ランキング
(2020年10月11日時点)
1位 レオネル キンテロ 3,084p
2位 ホセ トリビオ 2,772p
3位 大前 翔 2,695p
4位 ルバ トマ 2,079p
5位 山本 元喜 1,977p